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日本の可能性と限界:AOMシカゴ報告(4)

ゲリー・ハメルと有名な研究者が名を連ねた戦略部門のPlenary(「目玉」)sessionに出た。テーマは「The impact and relevance of strategic management」。要は、研究して学会誌に載せる(publish)のはいいけれど意味あるの?という古くて新しい話である。

実際、「定性分析はpublishできないからやめる」「あまり興味がないけどデータが取り易いテーマを選ぶ」「一流誌にアクセプトされたけど、狭い研究者以外は誰も知らない」という話は普通にある。統計処理などscientific rigorにこだわり、practical relevanceが疎かになっている。

Wiersema教授はそうした論文を経営者が興味のないことを研究しても仕方がない、boringと一蹴する。そして研究者への提案として「ビジネス誌を読め」「経営者と話をしろ」と言う。え、そこ?

だとすると日本も捨てたものではないのでは、と思うかもしれない。残念ながらscientific rigorがないことが多い。新聞記事はもちろん、内閣府は今頃EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)なんて言っているし(今までどうやって政策を立てていたんだろう?)、「エビデンス・ベースと言っておいて、統計や因果関係の基礎知識がない」会社が結構多いという話はよく聞く。経営書の大半は根拠が曖昧(あるいはサンプル数がめっちゃ少ない)で、健康食品に近い。だからセオリーだと言ったりしているが、「トンカチはすべてのものが釘に見える」ように、後付けはいくらでもできる。

scientific rigorとpractical relevanceの両立が大事だよね、という当たり前の結論だが実は前者がなければ後者もない。民間療法をすべて否定することはないかもしれないが、まだまだ私のような研究者が日本企業に対してできること、しなければいけないことは多い。嬉しいような、悲しいような。