最近聞かなくなったが、少し前に流行った「人的資本経営」では「人を経費でなく資産と見る」ことが喧伝された。一方、最近のWSJではもっぱら人減らしのニュースばかりである。新卒の採用もぎゅっと絞る方向にあり卒業生は大変らしい。
その背景には、コロナ禍とDXが相まって人を取りすぎたコンサルティング会社などの余剰人員、そして最近のAIである。日本ではあまり表だって言わないが、「生産性が上がって、10人でやっていたことが3人でできるようになりました。残りの7人はどうするんでしょう?」問題はより深い。
Lineヤフーの川辺会長は「大企業は人がたくさんいるからAIを入れなくていいんです」と指摘されていた。一時期のアジアでは、機械化するより人がやったほうが安上がりだったりしたことを思い出した。
人間の価値を考えると、1つはフォーワードシンキング、逆に言えばAIは過去の知識の積み重ねでしかない。スタートアップ投資のテストでは、人間のVCのほうがAIよりも結果がよい。AIこそが「先例主義」の権化なのであり(同様のことは漫画家の柴門ふみさんが7/27の日経でおっしゃっていた)、先例を守ることがミッションと思っている人はさっさとお払い箱になる。
おそらくもう1つはコーディネーション。異質な意見をまとめて価値を創造することだろう。人を巻き込んで挑戦することと言ってもよい。「過去の事例」「成功他社事例」を求める部長や役員はここでも不要になる。社員全員が「AIの言っていることが正しい」と思えば、コーディネーションはいらない。社長もいらない。
AI時代に考えなくてはならないのは、AIの価値ではなく、人間の価値では?