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AIはツール?:2025 AOM(2)

AIに関してよく言われるのは「AIを活用する」「AIを使って生産性を上げる」。もちろん結果として職を奪われる人も出るだろうが、基本的には「人を助ける」ということ。スタンフォード大学の研究所HAIは「Human-centered Artificial Intelligence」の略である。

いくつかのセッションで指摘されてハッとしたのは、人間の意思決定は無意識のうちにAIに影響されることだ。単に、AIに頼って考えなくなるだけではない。そもそも、AIを「意思決定の補助」として使うはずが、AIから勧められると正しいと思ってしまう。一度AIを経験すると、思考のパターンが変わり、AIを使わなくてもAIを使ったことのないグループよりもより良い決定ができるというプラス面の発表もあった。

更に面白かったのは、AIを「5人目のメンバー」としてグループでタスクをさせる実験では、平均は上がったが、結果がより似通ったという発表。底上げはできるが、よりレベルの高い「ハズレ値」の意見はAIと相性が悪く軽んじられてしまう。AIを使わなければ差をつけられるがAIを使えば同質化が進んで差別化できないというパラドックスである。

結局、「AIを活用する」ためには、人、つまり私達自身が「自分のことをよく知る」を踏まえたうえで「AIに何を求めるか」をはっきりしないといけないことだ。主観の大切さと言ってもよい。活用と依存の境目は微妙である。

HBSのLane教授は「AIはtool だけでなくtutorにもなりうる。将来は私達がAIの答えに満足したときに『本当にそうか』『もっと考えろ』とプッシュしてくれることもできる」とQ&Aセッションで指摘されていた。ただ、エコノミスト誌によるとそうした機能は不人気だそう。先生もリーダーも、嫌われてなんぼ?