BLOG

イノベーションは起こすのではなく起きる

イノベーションに関する濱口秀司氏との対談の中で電通社長の佐野傑氏が好きだとおっしゃっていた言葉である。異なる価値観のぶつかり合いの中でイノベーションは「起きる」のだと。

何を持ってイノベーションというかにもよるが、これは半分正しいが半分違っているのではと個人的に思う。組織学習(organizational learning)の例えを使うと、あくまで気づき、学習するのは個人であって、組織は学習しない。ただし、共有されると組織の知識になる。その意味で、新しいアイデアを出す(起こす)個人と、そのアイデアをよってたかって良いもの(マネタイズとか社会化とか)にする(起きる)組織があるのだと思う。

実は後者はKAIZENという名で日本企業のお家芸として世界中に知られている。問題は前者である。(一部から)苦情や文句が出るような新しいアイデアを我々は認めているだろうか?「文句や不満が(社員または顧客)から少しでも出ようものなら大騒ぎをするようなことが多くないだろうか?ちょっと血が出たくらいで大騒ぎをしていてはイノベーションはもちろん骨を断つ新戦略に取り組めるわけはない。

そう考えてみると、Gallup社が出すエンゲージメントサーベイ(熱意あふれる社員の割合)で日本が一桁、世界中でほぼ毎年最下位近くにあるのもよくわかる(世界平均は約20%)。言われたことを真面目に、生きがいのようにできる特質がある一方、自分がやりたいことができている人は少ないのだと。

特効薬はない。ただ、私達は「自分の好きなこと」を見つけることに対してもっと貪欲にならないといけないのではないかと思う。「ジョブ制」なんかが広まると、そもそも経験が少ない中で、ますますチャンスがなくなるのではないかとちょっと心配している。