BLOG

問題を裏返しても答えにならない:製造業不正の本質(1)

「産業界は品質不正問題に揺れた」「損失は一兆円」。ダイハツなどルール違反が連発する最近の見出しではない。2017年を振り返った日経新聞の記事である。当時も「過剰なノルマ」「ガバナンス問題」「たこつぼ化」などなどが叫ばれていた。

2024年2月5日の日経の記事でも、識者と呼ばれる人々が「余裕ある現場の設計を」「現場の弱体化」「お手盛りの調査委員会」などを指摘している。「日本のモノ作りが危ない」などとあおる記事も多い。

「過剰なノルマ」と言っておいて「マスクは工場に寝泊まりしてテスラの危機を乗り切った」と礼賛するマスコミ。ブラック化しないように優しく接していたら優秀な新人ほど成長できないとやめてしまうのと同じで、「問題を裏返しても答えにならない」「校長先生が仲良くしようといってもいじめはなくならない」という藤原正彦氏の警鐘をと全く反対のことをしているように見える。

いろいろあるにせよ、見逃されている本質が2つあると思う。1つは(2017年の記事でもコメントしたが)ルールさえ守っていればよいという発想。自分で考えたり、生み出したりする喜びが脇に追いやられていて「人的資本経営」と言っているのはびっくりである。そしてもう1つは「ルールを守ことが絶対正しい」という発想。だとすれば、ルールは絶対正しいのか?陳腐化したルール、百害あって一利なし的なルールが蔓延するこの時代に。

いずれにせよ、何かあるとルールを作ってアリバイ作りをするのはやめたほうがいい。だからこそ2017年から変わっていないどころか、悪くなっているのではと思うのです。