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OSをアップデートしよう(2)年収1000万

年収1000万円というのは、私が社会に出た昭和の終わりに目指すべき「エリートサラリーマン」の証だった。シーマが流行し、多くの企業が(製造業まで)不動産に乗り出した頃の話である。金曜の夜は1時過ぎでもなかなかタクシーがつかまらなかった(1年目の忘年会では、先輩と2人、仕方なくラーメンを食べて4時近くにやっと見つけた記憶がある)。携帯もなく、仕事でネットを使うなんて考えられなかった。

今の若い人はそんなことは全く知らない。にもかかわらず、いまだに「年収1000万円」というのが目安になっているのはどういうことだろう?

確かにアメリカでもずいぶん昔に「6桁年収」つまり10万ドルを稼ぐのがエリートの目安だった時代もあった。しかし、最近では、例えばアメリカ時代の私の博士課程の生徒達は私の倍以上、20~30万ドル(もしかしたらもっと)を准教授として稼いでいるし、ウォルマートの店長の上位は60万ドルを超え(2025/1/23)、TSMCの修士の初任給平均は約1000万(2025/10/8)という記事も目にする。大谷選手は別格にしても、大リーグに行けば年棒は軽く10倍になったりする。

賃金の引き上げなどでよく指摘されるのは「そんなに払ったらやっていけない中小企業の声」である。それは切実だと思う。ただ、そこにあるのは「給与を抑えて利益を出す」というOSのように思われる。

アメリカ企業、大リーグが大枚をはたけるのは儲かるから。つまり「社員にちゃんと払って、売り上げも利益も上がる」OSだからである。OSを変えない限り、「安い日本」では賃上げはせいぜい国の補助、つまり私たちが支払った税金か、私たちの子供たちの負担になる国債で賄われる。そして、古いOSに載せる複雑なプログラムは常にバグが多く、どこかでクラッシュする。