これまでも、色々パーパスばやりに対する違和感は書いてきたが(そういえば最近聞かないなあ)、今回はちょっと違う。「ああ、こう考えればいいのか」と腑に落ちた感があったので共有したい。
7月の半ばにかけて恒例の慶応ビジネススクール主催の「高等経営学講座」(通称トップセミナー)が帝国ホテル大阪で開かれた(これはゼミ生も見学)。最後の3日は毎年ハーバード・ビジネス・スクールの先生にも登壇いただいており、今年来てくださったKerr先生のユニリーバのケースで「なるほど」と思ったのである。
繰り返しになるが、日本のマスコミでよく目にするのは「リーダーパーパスを明確にしろ」「パーパスを社員に浸透させるにはどうしたらいいか」といった掛け声と思う。ユニリーバでは反対で「社員1人1人のパーパス」、つまり自分はどういう生き方をしたいのか、何が得意なのか、どのような姿・成長を目指しているのかを徹底的に突き詰めるところからはじめるという。それがわかって初めて会社の目指すビジョンやパーパスも自分事になるし、また「ちょっとこの会社は合わない」というのもわかる。
考えてみれば、企業経営も同じことである。これは自分のセッション(今年はアイリスオーヤマのケースを使った)でも強調したが、結局自社の現実、強み、弱みがわかっていなければ、有効な戦略などたてられるわけがない。アマゾンが何をやっている、Googleのベストプラクティスはと「最先端」を追いかけているのは、自分の病気がなにかわからないでおいて「何しろいい薬をください」と言っているのと同じ。どんなに良いがんの特効薬も糖尿病は治らない。
自分のパーパスを探るのは、何も会社に頼る必要はない。リクルートでは「自分がこれまで一番イケていたのはどういう時だったか」という質問をするというが、それこそ自問自答するべきと思う。Must やCan が重要なことは間違いないが、Willがなければやる気が出るわけはないし、成長もない。そんなことあたりまえ?