M41駒野谷です。
修士論文プロポーザルまで1ヵ月を切り、ゼミ生は少しずつ焦りを感じながらも、時には遠回りをしながら慎重に進めています。
さて、今回は日常生活で修士論文に通じる体験をしたので少し書いてみたいと思います。
私は美容室を探す際、hotpepper beautyを使って探しています。
特に東京は非常に店舗が多いことから、エリア、金額、サービス内容、口コミなど様々な要素を検討し、「これだ!」という店舗に行くようにしています。そして、期待値を下回ったら次は違う店舗を探し、まあまあ良かったら、担当を指名せず何度か通い、良い担当者を探すという行動をします。KBSに入り1年以上が過ぎ、現在は店舗も担当の美容師もやっと決まり、自分がどのように意思決定したかを振り返ってみました。
この店はサービスや金額面で見ると確かにお得です。3,780円でカット、シャンプー、ヘッドスパが付きます。しかし、これよりも安く、同じようなサービスをする店舗は他にもあるでしょう。
さらに美容師のレベルも高いように感じました(ここでのレベルは私の主観です)。自分がしたい髪型に近いものを実現してくれたり、シャンプーが気持ちよかったり、例えば「段差にはお気を付けください」と一層の注意を払ってくれたり、4人の美容師を経験しましたが、どなたもどれか一つではなく、複数の高いレベルのサービスをしてくれました。
そして、5月に入り通算5回目の来店時に初めて指名をしました。この方は4回目に担当してくれた方と同じ方です。
なぜその方に決めたか考えて見ると、実に単純で、「自分の名前を名乗り、ポイントカードの説明をして渡してくれたから」というのが一番の理由なのかなと感じました。そんなことどこの美容室でもやってくれる「当たり前のこと」の様に感じますが、この店舗の他の3人の美容師は、素晴らしいサービスをしてくれているのに、それがありませんでした。
KBSの授業では、2年生になると成熟した業界に対するアウトプットがメインの授業が多くなり、授業で学んだことを踏まえ、『「差別化」をどうするのか』ということを主眼においた発表が多いように感じます。また、修士論文においても、戦略提言を行う場合、「競合がやっていない何か新しいこと」を打ち出そうと考えがちになります。
しかし、今回の体験で感じた事は、「俯瞰的に見た時(業界や競合が行っている)に、顧客にとって必要と感じている当たり前が忘れられていないか」ということです。
競合が多くいる成熟した業界においては、様々な面で差別化を図ろうとするでしょう。美容室も多分に漏れず、価格やサービス等あらゆる面で差別化を図っています。そして、顧客が受けたサービスに対して払った対価が、期待値を満たすかどうかがリピートの基準となります。このようなリピーターを獲得することが必要である場合、他と違うことをやること以上に、「競合もやっている顧客にとって必要な当たり前」のことをやらなければ、どんなに良いサービスを受けても、十分な満足は得られないような気がします。今回の美容室も、他の美容室以上の様々な良さはあったのですが、なんとなくこれまでの担当者の方々に決められなかったのはこれが原因かもしれません。
企業の戦略を考える時も同様で、他社と違うことをし、企業価値を高め、顧客に選んでもらえるようになることは大事なことだと思いますが、今一度、「他社が当たり前にやっていること、業界での当たり前ができているか」の再点検が必要なのかもしれません。すごく尖った企業で、「他と同じ事はやらない」という企業は別かもしれませんが、接客が伴うサービス業では、特に日本人がサービスに対する期待値が高いこともあるため、肝心なことを見失わないようにしなければならないと思います。
今回の事例でも、私は名前を名乗ってほしかったわけでも、ポイントカードが欲しかったわけでもありません。ただ、「普通はやってくれるだろう」と思っていたことがされなかったことが少し残念で、素晴らしい取り組みをしている企業でも意外と見落としてしまうのだなと感じることができました。
私も来年の3月には派遣元に戻るので、目まぐるしく業界が変わる金融業に属する者として、新しいことを考えること以上に、現状の棚卸をした上で、「変えるもの」と「変えないもの」をしっかり決められる人になれるように努力したいと感じました。