人の重要性はずいぶん昔から言われており(人は城、とか)、新年に社長がスピーチをするときには「人材が最も重要」というメッセージはよく聞く。ここ数年「人的資本経営」とか「ジョブ制」とかがはやり、また人手不足や日本の競争力問題もあって、「人」への注目度は加速度的に上昇中だ。
だから「人事部は変われるか」(日経新聞2023/11/6)といった記事に代表される議論はよく聞くし、「人事系コンサルタント」が主催して有名企業の人事部長が登壇するセミナーは花盛りである。
でもこれって人事部の問題なの?ってシンプルに思いません?CHROを作り、人事部が何か素晴らしい仕組みを考えれば、社員のエンゲージメントも上がり、会社の競争力も上がる?
「ヒト、モノ、カネ(最近はプラス情報)」の使い方こそが経営だとすれば、改めて人の問題は経営の問題、CEOの問題だと思う。実際2010年のコーネル大学の調査ではCHROの仕事は「他の役員が自分こそヒトの責任者であるという自覚を持ってもらうこと」であり、それが最も難しいことだと指摘している。人事部は「ひとごと部」と揶揄されることが多いが、実は経営全体が「ひとごと」意識であることは多い。
欧米の研究でも人にかかわる研究はHRの研究者が手掛けてきた。しかし、経営の問題である以上戦略の研究者がやるべきだという思いから2023年初頭から手掛けてきた人材戦略調査の中間報告がてら「ヒトの問題」を3回シリーズでもう一度考えてみたい。ちなみに、今回の59社超の調査では(部分回答もあるので実際は53社)トップが経営人材関係にかけている時間が1割以下の企業が47%であった。