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パーパス経営:「根っこのないきれいな花」にしないために

世界最大の投資会社ブラックロックのラリー・フィンクが「A sense of purpose」という書簡を投資先の大企業CEOに送ったのが2018年。その後日本ではパーパス経営が盛り上がったが、海外ではあまり耳にしなかった。面白いことに8月にボストンで開かれるAcademy of Management (AOM)ではいくつもセッションがある。その報告はまたしたいが、このパーパス経営という世の中にあふれる概念には未だに腹落ちしていないことはこのブログでも何度か触れた。

今回新しい書籍などをもう一度読んで改めてその理由が分かった気がする。多くの「パーパス経営」はビジョンと理念、あるいは価値観の違いを等々と説明する。一方パーパスの共有は「しっかりコミュニケーションをする」程度で終わっている。また「価値観の共有」が重要だという一方で、「価値観の異なる多くの人材を集めることが重要」というダイバーシティ論者もいる。

シンプルなことを難しくしていないか?本質はどこにあるのか?がのどに刺さった小骨だった。パーパス経営が重要であることは論を待たない。しかし、だからこそその「みかけ」をきれいな花(あるいは言葉)で飾るばかりで、本当の根っこがしっかりと突き詰められてない。

パーパスの本質は、優先順位ではないかと思う。そして、優先順位とは言葉ではなくアクション、企業が順調な時ではなく逆境の時、全員賛成ではなく揉めた時に問われる。誰の意見がどういう理由で通るかを社員は見ている。ほかの会社だったらまずしないことをする、結果としてマスコミや投資家からたたかれる、でもやる。それがパーパスの力であり「らしさ」につながる。