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雑談からイノベーションが生まれるか?

コロナが収まるにつれ、リモートワークを続けるか、オフィスに戻るかという議論がかまびすしい。アメリカのインベストメントバンクでも方向性が分かれる。オフィス派は「気軽に声をかけることができる」から始まって「雑談から新しいものが生まれる」というものだ。ただ、何となくというのも多い気がする。

以前も書いたが、「対面」「雑談」が正しく評価されていないと思うのは私だけだろうか?10月に連載された吉野彰氏の私の履歴書を読めば、「雑談からイノベーションが生まれる」なんて口が裂けても言えないと思う。実はイノベーションそのものが分かっていないのかもしれない

少し繰り返しになるが、雑談の殆どは仕事に役立つことはない。だからこそ、「雑談」なのだし、リモートになって生産性が上がるのは当然だ。しかし、雑談のいいところもある。1000回に1回くらいいいアイデアが生まれることだけではない。親しくなれるのだ。アイデアが生まれるのは親しくなって、相談したり、悩むを打ち明けられるからということを飛ばしていないか?

会社に入るまでは知らなかった人たちと雑談(あるいは飲み会)を通じて、気が合うとか、面白いとか、信頼できるとか(あるいはその逆とか)を少しずつ知り合うのである。鬼上司にこんな面があった、暗いだけと思っていた同僚にこんな趣味があったという発見と驚きが共感を生み、つながりを作る。メタバースは雑談をリモートでしようとする試みの1つのように思われる。

「雑談もできるAI」という記事(日経10/26)を見て、そんなこと考えた。いかにAIも雑談も「そもそも」が考えられていないんだなと。手段の目的化の誘惑はとっても強い。