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サプライズを育てる:AOMシアトルから(3)

1997年あたりから議論され始めたDynamic capabilityがより注目をされるようになったの2つの理由があると思う。1つはネットの進展に加えコロナ、戦争のような想定外が頻発する時代に企業にとってもより迅速な変化が求められるようになっていること。そしてもう1つは地元Amazonあるいはお隣Appleの事業展開の成功である。

前者に関してはやはりイノベーションの話が多かった。受け身、つまり環境に適合するのではなく、自ら新しい環境を作っていくという意味でセレンディピティ(ちなみに反対語はZemblanityということを今回知った)を組織としてどう生かすか。

計画的なイノベーションは基本的には難しい。とすると、想定外、サプライズが重要になる。しかし、ここにも2つ重要な論点があり、(1)想定外があってもサプライズではなく単なる失敗として無視されがちで(2)サプライズを実感した人がすぐに動かないと忘れられる。つまり、サプライズは見い出して育てなくてはイノベーションにつながらないし、大物になるアイデアほど育てにくいのは人間と同じ。

後者の話は、Amazonの役員のプレゼンもあったが、AWSも広告事業(Alphabet、Facebookに次ぐ世界3位!)もコアコンピテンシーを生かして参入したわけではない。必要に駆られてやって、それを外販して大成功したのである。

結局、やってみないと分からない。いや、やってみるから分かるのだ。リーンスタートアップでは「MVPで顧客の反応を探れ」といわれてきたが、実は行動することで自分自身の本当の実力(capability)も分かる。これは以前紹介したeffectuationと軌を一にする。決められた道から一歩踏み出すと世界が変わるかもしれない。AIは決められたことしかできないし驚きも疑問もない。

少し長くなったが、ある発表で引用されていたゲーテの言葉で締めくくりたい。

If you take someone as they are, you make them worse, but if you take them as what they could be, you make them capable of becoming what they can be.