幹部(幹部候補も含む)研修について
2010年に帰国し慶応ビジネススクールで教鞭をとる以前から、コンサルティング会社時代のお付き合いなどを通して様々な企業の幹部研修をさせていただいております。KBSおよびそのセミナーに年2~3人を派遣いただくのも人材育成の1つの方法ですが、年15~20人程度を選抜し、自社にカストマイズした課題に取り組むパターンも増えてきています。
幹部研修(MBA、特にEMBAでもそうですが)で私が大切にしているのは知識を「付ける」こと以上に(時代遅れの)知識・思い込みを「捨てる」ことです。慣れたやり方、考え方を捨てるのはつらいものです(例えばブログ「Stay relevant」)。また、できる人ができても、何の成長でもありません。次のステップを目指すということは、自分、そして自社の現状を直視し、必要なことに(慣れていようがいまいが)挑戦するという「あたりまえ」のことを面倒がらずに、(すぐに結果が出なくても)めげずにやることに尽きると思うのです。
こうした私の考えと博士論文の発見を「 Strategic flexibility 」としてまとめた論文はAcademy of Management Executiveに採択され、この年のベストペーパー5本に選ばれ、またハーバードでも取り上げられています。
私が取り組む幹部研修としては、大きく3つのパターンがあります。
1.経営陣からの問題意識を踏まえ、完全カストマイズ
2.経営の基本知識をレビューしながら自社の課題について検討をする
3.社内プログラムや研修コンサルティング会社の設計したプログラムに参加
1.経営陣からの問題意識を踏まえ、完全カストマイズ
大企業では、意識の高い人材が分野を超えて社内の課題や将来への夢を率直に語るチャンスは意外にありません。また、チャンスを作っても1~2日ではお互いに胸襟を開けずに「大人の会話」で終わることも多く見られます。単発の研修の限界です。
逆に、例えば2泊3日を4~5回繰り返し、お互いに苦労をすることで、「力任せの営業で業績を上げていると思ったが思い違った」「本社で社長のご機嫌を伺うことだけにたけていると思っていたが、しっかり考えている」といった相互の発見が生まれます。
通常こうしたプログラムでは(1)ハーバードや慶応ビジネススクールのケース、あるいは経営書を取り上げ議論し、基本的な知識を深め(2)さらに、自分そして自社への示唆を考え、(3)並行して自社課題に取り組み、最終的には経営陣へのプレゼンテーションと議論を行います。「当社の経営は優柔不断で決められないと思っていたが、その立場で考えると自分も同じかもしれない」といった気づきもあります。
例えばある一部上場企業で担当させていただいているプログラムの概要はこちら。
形式、内容、あるいはそもそもの研修・教育一般に関してのご相談はお気軽に問い合わせページからご連絡ください。遠隔も当然ありです。
2. 経営の基本知識をレビューしながら自社の課題について検討をする
技術職一本、営業一筋など専門的に自分を磨き、高い評価を上げられてきた方(多くの場合30代後半から40代)に対し、経営に参画する準備として幅広い知識、見方を学ぶ場を提供する研修もあります。経営意思決定を担うためには、組織・戦略はもちろん、財務・会計、マーケティング、生産・ITといった分野について、詳しくなくても「何を抑えておかなければいけないか」「どの情報が重要か」「誰に任せればいいか」が分かることが必要だからです。
KBSでは他の分野の教員と協力して企業にあったプログラムを提供しています。詳しくは問い合わせページを通じて、あるいはKBS委員長室にご連絡ください。
3. 社内プログラムや研修コンサルティング会社の設計したプログラムに参加(講演を含む)
近年では各企業で人事・教育担当が幹部クラスのプログラムを(しばしばコンサルティング会社と協力して)設計することも見られます。そうした場合、設計段階からさまざまな知見・経験を共有して協力させていただくこともありますし、出来上がったプログラムのリーダーシップや戦略の実行に関する「コマ」の担当者として出講させていただくこともあります。
また、海外子会社の責任者を集めて日本(あるいは海外)で研修や会合をする際に、アメリカ時代はもちろん現在も毎年海外で教鞭をとる経験を生かし英語での授業を担当させていただく場合もあります(例えばブログ「EMBA無事終了」)。
海外の参加者のフィードバック
現在慶應丸の内キャンパス(MCC)で教えるプログラムと参加者の感想
社外取締役について
欧米のガバナンス理論では取締役(board of director)の役割には3つがあると指摘されています(e.g., Johnson, Daily, & Ellstrand, 1996)。それは(1)コントロール、(2)経営陣へのアドバイスやカウンセラー的役割、そして(3)情報や資源の供給ルートの3つです。
日本では(1)の「悪いことをしないように監視する」ばかりが議論されますが、例えば海外進出に対して、あるいはM&Aに関しての知見やアドバイス、あるいは取締役の人脈を通じた情報の収集・提供も非常に重要な役割です。
10年の戦略コンサルティング経験、16年のアメリカ経験、そして20年を超える企業の浮き沈み、成功と失敗の研究を通じて、提供できうる私ならではの価値とは、グローバルな視野を持ちながら、日本企業の現状を踏まえて「はやり」に流されないこと、原理原則に基づいた意見を提供できることだと考えています。参考までに、業績の一例を下記にあげます(そのほかの研究にご興味のある方は「清水勝彦について」のページの最後にあるCVをご覧ください)。
現在は株式会社ドリコム(東証グロース)の取締役監査等委員を務めています。若いゲーム会社に対して、顧客視点というよりはM&Aを含めた経営視点から「よい質問者」であることを心掛けています。