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マイクロマネジメント考(後):Top vs. people around the top

マイクロマネジメントが悪役となって久しいが、滅びる気配はない。2025年7月号の日経トップリーダーによると、中小経営者200人の回答のうち2人に1人はプレイングマネジャーで、その半数以上は現状維持か業務を増やすと答えている。

社長が全部決められる時代ではなくなったとはいいながら、実はその「素人目線」がいいのかもしれない。若手社員が言っても無視されることを、社長が言うと違う。逆に社長がぽろっと言ったことに対して、周りが過剰に反応することもある(「忖度」というやつである)。

一番大きいのは、社長の「こだわり」が社員に伝わることだ。顧客を大切にする、無駄を省く、ともすれば抽象的なミッションやスローガンが、社長の具体的な行動を通じて社員のDNAに埋め込まれていくのである。永守ニデックCEOは背中を見せることの重要性を強調されている。

面白いことに、特にオーナー系の社長を「細かい」と言っているのはその下の役員クラスが殆どで、現場の社員には結構人気があったりする。コンサルタント時代に担当したある不動産会社では「社長は太陽、役員は雲」と社員は明言していた。

もしかしたら「任せない社長」を仕立て上げているのは、忖度力のたくましい役員たちではないだろうか?社長が怒りそうな意見は検閲が入り、いつの間にか裸の王様と物言わない家来たちが出来上がる。役員は「虎の威を借る狐」になり、風通しが悪く、情報共有も口だけである。

本田宗一郎氏が空冷エンジンにこだわった時に部下は大反対をした(中にはのちの社長の久米豊氏もいる)。アップルが「上司に言われたことに従う人間ではなく、これをやるべきだと言う人間を雇う」ことも有名である。1992年に危機に陥ったリクルートを救ったのはダイエーの中内さんだった。その後、2社がどうなったかはご存じの通りである。