全部自分でやらないと気が済まない経営者は多い。スティーブ・ジョブズはもちろんディズニー中興の祖マイケル・アイズナー、ニデック永守CEOなどなど。一方で、これだけ環境変化が激しい時代に、トップがすべてを知り、判断することは不可能である。日本で元気なのは星野リゾート、ドン・キホーテなど権限移譲を積極的に進める企業が多い。
マイクロマネジメントの大きな問題は、悪循環を引き起こすところにある。権限を委譲しないから、社員はどうしても指示待ちになり、新しいことをトライすることを自制する。トップからみれば、舌が育っていないから自分でやるしかないと思う。そのサイクルは強まるばかりである。
『ビジョナリーカンパニー2』にも似たような記述がある。自分で判断できない社員が組織に増えてくると、様々なルールを作らざるを得ない。すると、自ら考えて挑戦したい社員のやる気をそぎ、そうした社員はやめていく。ダメ社員が増えるからますますルールだらけになり、企業の活力はなくなる。「ハラスメントはグレーの部分が多いから会社がしっかりと規定するべきだ」とまじめに言っている記事を見て卒倒しそうになった。問題の本質を自分の専門にすり替える「専門家」に騙されてはいけない。
ではどうしたらいいか?権限移譲を社長が押し進めても何も変わらない。むしろ悪くなる。本人は任せているつもりでも、現場は全くそう感じていないし、急に「自分で考えろ」と言われてもどうしたらいいかわからない。「現場にしっかりと任せる太っ腹のリーダー」ではなく「現場のことを何も知らない粗いリーダー」になっていたりする。(次回に続きます)