転ばぬ先の杖問題のもう1つは、「(目上の人の)忠告に耳を傾けろ」と言う指摘。理屈としては全くその通りと思うが、こうした忠告、アドバイスはまず役に立たない。失敗してから、そういえば、なんてことは多くの人が経験しているはずだ。
実は、これは私がクラスで行うケースディスカッションのテーマの1つでもある。優秀な幹部候補が、失敗した先任者からアドバイスをもらったはずなのに、同じ失敗をしてしまうのはなぜか?
詳細はクラスに譲ることにして、ここにあるのは情報の非対称性である。アドバイスをする方は失敗を経験しているのに対し、される方は失敗を経験していない。だからアドバイスの本質がわからない。聞いた方は「わかったつもり」になってるだけだし、アドバイスをした方は「俺が言ったのに」と責任は全く感じていない。
他社の失敗はもちろん、自社の失敗からすら学べないことが多いのは、失敗を直接味わった人たちはどこかに飛ばされて、傍観していた人、あるいは全く知らない人たちが学ぼうとするからのように思われる。
アドバイスは与えるのではなく、(失敗を実感し)求められなくては効果がない。「親孝行、したい時には親はなし」も元は同じ。長寿化のおかげでこの辺は少し変わっているかも。