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シンプルがいいというものの…:Knowing doing gap (3)

「シンプルが美しい」「シンプルに考えろ」などとよく聞く。しかし、現実はわかりにくく複雑なものや手続きが多い。ワクチン接種の管理は住民票でやっているようだが、マイナンバーカードって何のため?と思わされる。何かするたびに新しいデータベースを作って、お金を使って、不具合が出て、責められる。誰もハッピーではないと思うのだけど。

1つは「保険をかける」からだろう。もしこんなことがあったら、というレアなイベントに備える発想。「マイナンバーカードの情報が洩れたらどうするんだ」という1人のクレーマーのために1万人が迷惑する構造である。目に見えにくい迷惑や保険がコストであることに考えが及ばない。

もう1つは「More is better」発想。これは家電製品や市場調査などでもいえるが、いろいろあれば便利でこそあれ、無駄ではないだろうと考える。結果として、使い勝手が悪くなり、故障(あるいはノイズ)可能性の個所も増え、高くなる。

これと関連して3つ目は「複雑なことはシンプルなことより価値がある」というバイアス。確かに簡単なことを難しく言っている本は多い。結果としてわからなくなる、迷う。ビギナーズラックがあるのはシンプルに考えるからだ、色気を出していろいろ考えだすから失敗する、と指摘するのは桜井章一、藤田晋の両氏(『運を支配する』)。

白のTシャツとジーンズがおしゃれ、と言われたこともあった。今着ようとすると「手抜き」「年寄りは顔がくすんで見える」などとさんざんである。シンプルは、本音が出てしまい言い訳も見破られやすいのだ。だから複雑にしてごまかさないといけない。