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「わかりやすい」とは何か?(1):具体と抽象

『具体と抽象』(細谷功)という本を読む機会があり、「わかりやすさ」について考えてみた。テレビも選挙も経営書も「わかりやすい=具体=善」「わかりにくい=抽象=悪」という風潮に本書は問題提起をしている。抽象化が思考を広げ応用を可能にする。法則や理論はまさに抽象化のたまものだ。

似ているが本質的に異なる軸がもう一つある。それは「身近かどうか」「よく聞くかどうか」。具体的なものほど身近であることが多いのは確かだが、抽象的な言葉でもよく聞くとわかった気になる。「戦略」はそのよい(悪い?)例だ。

実は「数字」は抽象の最たるもの。よく「具体的に数字で示せ」なんていうけど、実はこれは自己矛盾をはらんでいる。それに気をつけないと「何をやっても数字さえ上げればいい」という社員が生まれる。

具体にどんな思いを込めるか、なぜ抽象的な表現を使うか。個人的には抽象はよく考えていないことの隠れ蓑になることが多いので嫌いである。「数値目標」は昨年実績に10%足しただけとか。「わかりやすい人」なんて言われると、カチッと来ることも確かだけど。