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不測に備えるとは在庫を積み増すことではない

コロナ問題が始まって「不測」「不確実性」という言葉をより頻繁に見るようになった。それに続くのは「柔軟性」「分散」「在庫」…。ぎりぎりを追求すると「不測」の事態があった時の打撃も大きいから「余裕」を持て、ということだ。

私は「不確実性のマネジメント」というクラスをKBSに来てから教えている。例えば、エベレストの登頂で急に天候が悪化したり病人が出たりしたケースなどを使う。そこでも言うのは、柔軟性は大事だが、余裕とは「ムダ」の別名であるという自明のことである。「のどもとすぎれば」で、年がたつにつれて削減の対象になるのが通常のように思う。「問題を裏返す」だけの対策はあまり意味がない。

危機に直面すると本当に大切なものが見えてくる。つまり、不測に備えるとは「原点に返る」ということだ。そもそも自社は何のためにあって、そこで働く社員は何を求めているのか?好調時にゆるく増加したコストを見直すのもそうだろう。Amazonの有名な14のリーダーシッププリンシプルはドットコムバブル崩壊後の2002年に作られた。Netflixが少数精鋭主義を徹底的に追及するのは、同じく2001年に経営危機に陥りやむをえず人を減らした結果「仕事が楽しくなった」ことから始まる。

今できることは、これまで「あたりまえ」と思っていたことをもう一度原点に立ち戻って見直してみるということではないか。大学や企業でも、遠隔授業、在宅勤務をするなかで、なぜこれまでそうでなかったのか、そもそも何が目的なのかを考える良い機会であると思われる。

もう1つの不測は満開の桜に雪が降ったことである。ちなみに、写真はレストランの敷地ではなく、自宅のベランダからです。