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「好奇心を持て」とはどういうことか?

「Curiosity kills the cat」ということわざがあります。ティム・バートンのThe Nightmare before Christmasで博士がジャックに「いろいろなことに首をつっこむと面倒を抱えるぞ」と脅すのです。ここでのCuriosityは家政婦は見た! の意味に近いでしょう。

一方4月になり新入社員に対して「好奇心を持て」というメッセージが多く発せられていました。世界がどんどん変わっていく中で、若者は過去にとらわれず新しいことにどんどん挑戦してほしい、トップのそんな気持ちはよくわかります。

ただ、そもそも「好奇心を持て」と言われて持てるものなのでしょうか?ウェブでさっといれてみると「好奇心=珍しいことや未知のことなどに興味をもつ心」と出てきます。「子供は好奇心の塊」だとすると、「好奇心を持つ」のではなく「抑えられた好奇心を解き放す」といった方が正確でしょうし、そもそもなぜ「抑えられた」のかという疑問も湧きます。それって、大人がしたんじゃないの?だとすれば、若者にいうのは筋違いで、大人、役員なのか課長なのかあるいは先生なのか、に言わなくてはいけないんじゃないの?

そしてもう1つ重要なのは、「好奇心を持ったから何よ?」です。そうしたら、本当に好きなことやらせてくれるの、給料上がるの、出世するの?そんな質問を大人にしようものならバカ扱い、せいぜい呆れられるのがオチです。

「新入社員がどんどん新しいことに挑戦してくれれば、その中からきっと会社の将来を託すイノベーションが生まれてくる」という期待は、正確に言えば「色々試す中で、良いものが出てくる」ということであり、さらに言えば「1つの成功のために、みんな捨て石になってくれ」というメッセージです。失敗してもそれなりに評価されるのならともかく、バッテンが付くのであれば一瞬持った好奇心もすぐしぼみます。失敗を評価することは簡単ではありません。その覚悟がないから、同じ口が別の時には「そんなことして何になるんだ」と博士のように言うのです。

しかし、だからと言って好奇心の価値が下がるわけではありません。『機会損失』でも少し自分のキャリアに触れましたし、「私の履歴書」を読んでいても思うのですが、よく取り上げられる「好きだからその仕事で成功した」人以上に、「したから、その仕事が好きになった」人がたくさんいます。人間はそんなに浅いものではありません。思いもしない仕事や経験が知らなかった自分を照らしてくれることも多いのです。社会に入ったら、好奇心は静からではなく動から生まれるのではないでしょうか?