BLOG

仕事をしないすすめ

先日の学生のブログにもありましたが、新学期を迎え、卒業生は社会に戻り、新たなゼミ生を迎えました。昨年のゼミ生は電通、マッキンゼー、コーポレートディレクション(私の前職です)と、第一希望かそれに近い企業に職を得ています。

特にコンサルティングを選んだ2人に言ったのは「最初の1か月は、できるだけ仕事をするな」ということでした。「まず体を動かせ」「がむしゃらに取り組むことで何かが見えてくる」というすすめが多い中で、あえてそう言ったのは自分の体験からです。

コンサルティングに限らないとは思いますが、本社・企画系の職種の場合「仕事をする」ことは実は簡単です。いろいろな情報を集めて読み込み、分析する、スプレッドシートを作る、きれいなチャートにまとめる…。でも、その仕事が本当に価値を生み出しているかどうかは別です。「わかっていないから、まず体を動かせ」というのですが、「わかっていないから、やったことがすべて無駄」「自分の仕事を正当化しようとしてかえってマイナス」もよくあることなのです。「本当の目的は?」などとじっとしていろいろ考えることは不安です。自分が何も生み出していないような気がする、バリバリ仕事をしているほかの人においていかれる気がする。だからと言って「仕事に飛びつく」ことは、不安の解消や自己満足にはなっても、自分のバリューをあげることにはなりません。錆びたのこぎりの木こりと同じです。

最初の1か月は、自分が何を求められているか、自分のバリューとは何で、どのようにしたら出せるのか、会社で成功している人としていない人の違いは何か、そういった点をよく観察し、人に聞きなさいーそれがメッセージです。「仕事に逃げるな」と言ってもいいでしょう。

「がむしゃらにやることで見えてくるものはある」ことはもちろんあると思うのですが、「がむしゃらにやる」のは若者―学部新卒生とかーにのみ許された「贅沢」であって、即戦力を求められるMBAには当てはまりません。

考えてみれば、これは卒業生だけでなく、先生、上司、親としても同じようなことが言えそうです。「黙って(我慢して)任せる」ことより、「あれこれ口を出す」ほうが、実は簡単だし、仕事をしている気になる。でも本当にそれでいいのかと、新しいゼミ生を迎えて改めて思うのです。