若くして亡くなられた臨床心理士森俊夫さんの『”問題行動の意味”にこだわるより”解決志向”で行こう』を読みました。この本は、もともと工藤勇一先生の『学校の「当たり前」やめた。』を「やっぱり、わかっている人はわかっている」と読んでいるうちに出会ったものです。
成功企業とそうでない企業を比較して、何が「原因」なのかを探ることが経営学であるといわれます。ですからビジネスパーソンも我々学者も因果関係が大好きです。「問題の本質」という言葉もよく使います。 本書でも「子どもたちの心の内にある、切ない叫び声を聞け!」といったスローガンが出てきます。
「ホンマかいな?」森さんはそう言います。そんな見えないものが見えるの?「見えた気になっている」だけじゃないの?それで、どうするの?
理論的には説明できないけれど、歯ぎしりやいびきの問題は寝る位置を変えることで結構解決されるのだそうです。 しかしカウンセリングの世界では「問題は何ですか?」と聞いて、分析ばかりして解決の行動になかなか至らないケースも多いといいます。「解決志向」、「どうなればいいの?」という質問に対して本人が具体的に答えられることが重要だと強調されています。
「見えないものでなく、見えるものをちゃんと見る」「見えたらすぐ動く」「意味よりも解決だ」というシンプルなメッセージは、 組織を動かす、特に人とか文化を考える際に忘れてはいけない視点だと強く思いました。 「見えない」のは「見逃している」ことも多いのです。
「肝心なことは目では見えない」ことを星の王子さまはキツネに教えられました。「大人は数字が好きだ」とも。自著のあとがきでも書いたのですが、経営では機会損失を含め「見えないもの」への想像力と「ちゃんと見る」観察力の両方が必要です。「ちゃんと見る」とは、目的志向、将来志向、行動志向の裏返しであるという意味で、想像力の別のものではありません。「本当に大切なことは何か?」ということです。
日本生活協同組合連合会(Co-op)の本田英一代表理事会長と「同じことでも問題解決というより、価値提供と言ったほうが前向きで、お金の匂いがする」なんていうお話しをする機会が先日ありました。ちょっと似ている感じがしませんか?